建物の明け渡し請求を弁護士が解説!強制執行の流れやデメリットについて

建物の明け渡しを入居者に求めたところ、入居者が素直に応じてくれない場合にどのように対応すべきかお困りの方がいらっしゃるかと思います。そこで、以下では建物の明け渡しに関する手続きについて説明させて頂きます。

建物の明け渡し請求に関する基礎知識

まず、建物の明け渡し請求に関する基礎知識について説明させて頂きます。

建物の明け渡し請求とは

建物の明け渡し請求には、二つの請求の仕方が考えられます。1債権的請求と2物権的請求が考えられます。1債権的請求とは賃貸借の契約終了に基づく明渡し請求等の契約に関連して生じる請求です。2物権的請求とは所有権に基づく返還請求権としての明渡し請求等の自分が所有権等の誰にでも主張できる請求をいいます。

2つの請求は、互いを排斥する関係にはないので、2つの請求を同じ人に対して主張することはできます。

明け渡し請求を検討できる条件・状況

明渡し請求のうち、相手が権原なく不法に不動産を占有している場合は、物権的請求として特に問題なく明渡し請求をすることができます。明渡し請求が争われる多くのケースは賃貸人が賃借人に対して建物の明渡し請求をしたときに、賃借人が賃貸人に対して明渡し請求を拒絶する場合です。特に賃借人が賃料を滞納しているにもかかわらず、賃貸借契約の存在を理由に明渡し請求を拒絶している場合、明渡し請求を検討すべきです。

賃料を滞納されたらどのような対応が必要?

賃料を滞納している賃借人に対して明渡し請求をする場合、どのような対応が必要なのかについて以下では説明します。

電話・書面による請求/主張

賃借人が賃料を滞納している場合、賃貸人は相当の期間を定めて賃料を支払うよう催告し、その期間内に賃料が支払われないときは、賃貸借契約を解除できます。そして、賃貸借契約を解除すれば賃貸人は賃借人に対して賃貸借契約終了に基づく建物明渡し請求をすることができます。そのため、賃貸人は賃借人に対して電話や書面により相当の期間を定めて賃料を支払うように催告し、その期間内に賃料が支払われなければ解除し、電話や書面で建物明渡しの請求をすることができます。しかし、賃貸人が電話や書面によって催告や建物明渡し請求をしたとしても、賃借人が取り合わない可能性もあります。

内容証明郵便による請求

そこで、賃貸人の賃借人に対する内容証明郵便による請求が考えられます。内容証明郵便によって上記のような請求をすれば、記録として賃貸人が賃借人に対して請求をしたことが記録されるので、後の訴訟等において証拠として使用できます。また、内容証明郵便を送られると、普通の郵送よりも相手に対して本気で請求していることが示すことができるため、賃借人が賃料の支払いや建物明渡し請求に応じる可能性が上がります。ただし、内容証明郵便を送っても、賃借人がすんなり退去しない場合に、賃借人に対して建物明渡しを強制的に行うためには、判決や調停調書のなどの債務名義が必要です。

訴訟等の対応

建物明渡し請求の訴え

債務名義を得るためには、裁判所に建物明渡し請求の訴えを提起することが考えられます。この場合、滞納賃料も併せて請求することができます。訴えの提起は、被告または建物の所在地を管轄する地方裁判所に訴状を提出して行うことになります。訴状が受理されると30日以内に第1回口頭弁論期日が指定され、賃貸人が原告、賃借人は被告として呼び出されます。第1回口頭弁論期日において、原告は出席し、被告が答弁書を提出せずに欠席した場合、裁判所は原告の請求通りの判決をします。一方、被告が出席又は答弁書を提出して原告の請求を争うとした場合、裁判所は第2回以降の口頭弁論期日を指定し、双方の言い分や証拠提出を尽くします。たとえば、賃借人は「催告を受けていない」「建物を修繕してもらえない」などと主張することもあります。ただ、催告については、仮に賃貸人が内容証明郵便を予め送っていればそれを証拠として裁判所に提出することで賃借人の主張を阻止することが可能になります。

裁判所が双方に和解を試みることもあります。和解は原告と被告が互いに譲歩し合って紛争を解決することなので、賃貸人も賃料の減額に応じたり、明渡し期限を猶予したりして妥協点を模索する必要が出てきます。もし裁判所で和解が成立すれば和解調書が作成され、判決と同じく債務名義となります。和解調書においては、部屋を出ていった賃借人が残した日常用品や家電などの家財についての所有権を賃借人に放棄させる条項を定めることができます。もし、この条項を定めることができれば賃貸人は賃借人が部屋から出ていった後に残ったものについて処分することが可能になります。

強制執行の申立て

建物の明渡しを強制執行するためには、そこを管轄する執行裁判所に強制執行の申立てをしなければなりません。強制執行を申し立てると、執行官が建物の占有状況を調査した上で、賃借人に対して明渡しの催告をし、催告に応じなければ強制的に賃借人を退去させることができるようになります。このとき、賃借人の家財は賃借人やその家族に引き渡されますが、建物に誰もおらず、引き渡し先が見つからないときは執行官が売却することになります。しかし、賃借人の家財の引き渡しや売却ができない間、執行官は賃貸人に家財を保管させることができますが、これは保管する家財の量にもよりますが、賃貸人にとってとても大きな負担となる可能性があります。

建物の明け渡しに関する手続きにおいて弁護士が必要な理由

建物の明け渡しに関する手続きにおいて弁護士に相談した方が良い理由について以下では説明させて頂きます。

専門的な知識を考慮した請求対応

建物が生活の基盤であることを考えると、明渡しを求められた賃借人も本格的に争う構えを見せることもあります。そのため、明渡しの請求を検討している段階でどのように準備をしていくかについて専門的な知識を有する弁護士に予め相談して対策を練っておくことが重要となります。

入居者とのやりとり等の工数削減

弁護士に依頼すれば、賃貸人は入居者とのやりとりについては弁護士に任せることができます。そのため、賃貸人は本業に専念することができ、入居者の主張等にいちいち対応する必要性がなくなります。

迅速な対応・早期解決

弁護士が対応することによって、入居者が素直に退去に応じることや、妥当な条件の提示を相手にすることによって交渉で入居者が退去に応じる可能性が高くなります。そのため、上記で述べた訴訟や強制執行のような煩雑な手続きをすることなく、建物明渡しを実現することができる可能性が高くなります。

明け渡し等の不動産トラブルは弁護士にご相談ください

明渡し等の不動産トラブルについては、様々な法的知識が必要となり、今後の見通しを適切に立てることによって、どのように準備していくかを決めることが重要となります。明渡し等の不動産トラブルにお困りの方は是非一度、弁護士にご相談ください。