脳外傷(遷延性意識障害・高次脳機能障害)に強い弁護士の重要性について

交通事故で脳に外傷を負い、遷延性意識障害や高次脳機能障害になった場合には、専門の弁護士に相談したり、対応を依頼したりする必要性が非常に高いと言えます。

こうした傷病にかかると、後遺障害等級認定手続きを始めとして、多くの法律問題に対応しなければならないからです。遷延性意識障害になると、被害者のご家族は転院先を見つけることにも一苦労されることが多いです。また、将来的に自宅介護とするのか施設介護を選ぶのかによって、とるべき対応方法が全く変わってきますし、賠償金の金額も変わります。

高次脳機能障害となった場合、まずは適切に後遺障害等級認定を獲得することが重要です。

保険会社と争いになることも多いので、適切な医証を用意して、過去の裁判例の考え方に従い、手続きを進めなければなりません。医師に対し、被害者に有利な内容の意見書の作成を求めることも有効です。脳外傷を専門としない弁護士の場合、こういった対応をとることができないので、被害者が本来受け取れるはずの賠償金を受け取れなくなったり、本来しなくて良い苦労をしなければならなくなったりします。

遷延性意識障害高次脳機能障害の専門知識を持ち、こうした被害者の方を専門に取り扱っている弁護士に対応を依頼することにより、困難な事例でも、被害者の方を適切に救済することが可能となります。

遷延性意識障害

遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態になってしまうことです。

交通事故で脳が強く衝撃を受けて、脳の大部分が壊死したり損壊してしまったりすることにより発症します。自力移動や摂食、排泄などができず、他者と意思疎通することもできません。基本的に、一生、全面的な介護が必要な状態となります。

後遺障害の等級としては1級が認定されます。遷延性意識障害になると、ご家族様にはさまざまな困難な問題が降りかかります。

たとえば、自宅介護か施設介護かを決定しなければなりませんし、自宅で介護するとしても、介護士に依頼するのか家族が介護するのかを決めなければなりません。自宅で介護をするなら、自宅改装も必要となります。

遷延性意識障害の定義

  1. 自力移動ができない。
  2. 自力摂食ができない。
  3. 屎尿失禁をしてしまう。
  4. 眼球はかろうじて物を追うこともあるが、認識はできない。
  5. 「目を開け」「手を握れ」などの簡単な命令は応ずることもあるが、それ以上の意志の疎通はできない。
  6. 声を出しても意味のある発語ができない。

常に介護を要する遷延性意識障害の場合、適正な等級を獲得して第1級の等級が認定されると上限の4,000万円までの補償を受けることができます。遷延性意識障害で適正な等級を得るためには、例えば、高次CT画像やMRI画像、また、医師が診察して作成した後遺障害診断書などの適切な資料を用意しなければ、適正な後遺障害の等級認定がされない場合があります。

もしご家族で交通事故にお遭いになられた方で、遷延性意識障害のような症状を発生しておりましたら、すぐに交通事故に詳しい弁護士にご相談しましょう。

転院問題への対処

転院問題とは、遷延性意識障害の患者が入院する施設の問題です。

交通事故後、被害者の方は病院に入院することになりますが、多くの病院では、ずっと入院し続けることが認められません。症状が落ち着いてくると、転院を促されます。その後、新しい病院に移っても、3ヶ月ごとくらいに転院を促され、病院を探し続けなければならない状態になります。このようなことになる理由は、病院では、3ヶ月以上入院すると、保険の点数が下がってしまい、病院の収入が減る制度になっているからです。また、急性期を過ぎると、特段病院における処置が不要になるということもあります。

転院をするときには、脳神経外科の専門医のいる病院を探さねばなりませんし、転院先の病院で、後遺障害認定に必要な検査に対応しているのかを調べなければなりません。また、他の病院での検査結果をもとに、後遺障害慰謝料診断書を始めとする診断書を書いてもらえるのかも問題となります。早期に脳外傷分野に強いの弁護士にご相談を頂いておりましたら、こうした重要なポイントをお伝えして、適切な医療機関を選択いただくことが可能です。

このことによる、将来的に適切に後遺障害認定を受けて、十分な医療を受けることができる環境を整えることにもつながります。

高次脳機能障害

高次脳機能障害は、脳の認知機能傷害です。

脳が損傷を受けることにより、各種の認知機能が低下したり失われたりします。症状としては、記憶障害や注意傷害遂行機能傷害や失語症失認症などがあります。本人に傷病の自覚がないことも多く、周囲に知識が無い場合、「単なる性格の変化」と思われてしまうことも多いです。

症状の内容や程度に応じて、1級、2級、3級、5級、7級、9級の後遺障害が認定される可能性があります。高次脳機能障害の場合、適切に後遺障害が認定されにくく、被害者やご家族の方が苦しまれているのに、必要な賠償金の支払いを受けられない例を見ることが多々あります

高次脳機能障害の認定基準は以下のとおりです。

等級 認定基準
1級1号 (要介護) 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介助を要するもの
2級1号 (要介護) 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲な自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
3級3号 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、 円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
5級2号 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの
7級4号 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級10号 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの