会社から損害賠償請求されたら?労働問題に強い岡山の弁護士が徹底解説
会社から突然「損害賠償を支払え」「修理代を負担しろ」と言われると、多くの方は「自分が悪いのだから支払わなければならないのではないか」と考えてしまいます。しかし、会社からの請求がそのまま認められるとは限りません。
従業員によるミスや事故が原因で損害が発生した場合であっても、会社には事業活動に伴うリスクを負担すべき側面があります。また、請求額の計算方法が不適切であったり、会社側の管理体制に問題があったりするケースも少なくありません。
本記事では、会社から損害賠償請求を受けた場合の基本的な考え方、会社からの請求に対して確認すべきポイントなどを解説します。
目次
会社から損害賠償請求された方へ|まず知っておくべきこと
会社から請求されても直ちに支払う必要はありません
会社から損害賠償請求書や通知書が届いたとしても、その場で支払いに応じる必要はありません。
実際には、「会社が損害を被った」という事実と、「その損害を従業員が負担しなければならない」という結論は別問題です。会社は請求できますが、その請求が法的に認められるかどうかは別途検討が必要になります。
特に注意したいのは、会社から示談書や分割払いの合意書への署名を求められるケースです。一度署名してしまうと、自ら責任を認めたものとして扱われる可能性があります。
請求を受けた段階では、請求根拠や損害額の計算方法を確認し、本当に支払義務があるのかを慎重に検討することが重要です。
従業員のミスは必ず全額自己負担になるわけではありません
業務中のミスによって会社に損害が発生したとしても、その全額を従業員が負担するケースは決して多くありません。
裁判所は、企業活動には一定のリスクが伴うことを前提に判断しています。そのため、通常の業務遂行の中で発生したミスについては、会社側も相応のリスクを負担すべきであるという考え方が採られています。
例えば、配送中の事故、発注ミス、機械の操作ミスなどで会社に損害が発生した場合であっても、従業員の負担額が大幅に減額されることがあります。
弁護士として重要だと考えるのは、「ミスをしたかどうか」ではなく、「どの程度の責任があるのか」「会社側に問題はなかったのか」という視点です。単純にミスがあったという理由だけで全額請求を受け入れるべきではありません。
「罰金●万円」など、あらかじめ決められた損害賠償は違法です
雇用契約書や就業規則等に「ミスで損害を出したら一律●万円を支払う」「●年以内に退職する場合は研修費用として●万円を支払う」といったルールが定められていることがあります。
しかし、労働基準法第16条では「違約金の定めや損害賠償額の予定」を明確に禁止しています。実損害額を計算せずに、あらかじめ「●万円支払え」と定めているルール自体が無効となる可能性が高いため、会社から言われるがままに支払う必要はありません。
給与天引き・退職金控除には法的な問題がある場合も!
会社から「修理代は給料から引いておく」「退職金から差し引く」と言われることがあります。
しかし、会社が一方的な判断で給与から損害額を控除することには大きな問題があります。労働基準法では賃金全額払いの原則が定められており、会社が自由に給与を差し引くことは原則として認められていません。また、退職金についても同様です。退職金は会社の判断で自由に減額できるものではありません。就業規則や退職金規程の内容、損害発生の経緯などを総合的に検討する必要があります。
既に給与天引きや退職金控除が行われている場合でも、対応できる可能性がありますので、早めに弁護士へ相談することが重要です。
会社から損害賠償請求される可能性のあるケース
業務中の事故・ミスを理由に修理代や損害を請求された
会社からの損害賠償請求で最も多いのが業務中の事故やミスに関するものです。
例えば、機械設備を破損した、取引先の商品を壊した、誤発注によって在庫が大量に余った、配送中に商品を破損したといったケースです。
もっとも、こうした事故やミスは企業活動を行う以上、一定程度発生することが避けられません。会社が適切な教育を行っていたのか、管理体制に問題はなかったのか、現場に無理な業務負荷がなかったのかといった事情も重要になります。
実際には、会社側の請求額がそのまま認められるケースは多くありません。
社用車事故の修理代を全額負担するよう求められた
営業職や配送業務では、社用車事故を理由とした請求が頻繁に見られます。
会社からは車両修理費だけでなく、代車費用や営業損失まで含めて請求されることもあります。しかし、業務命令によって運転していた以上、その運転行為は会社の事業活動そのものです。会社が任意保険へ加入していたのか、安全運転教育を実施していたのか、長時間労働によって注意力が低下していなかったのかなども検討対象になります。
社用車事故だから全額負担という考え方は、実務上必ずしも妥当ではありません。
発注ミス・クレーム対応・売上減少を理由に請求された
営業担当者や事務担当者に対して、発注ミスや顧客対応の失敗を理由に請求が行われることがあります。
また、「あなたの対応が原因で契約が解約された」「売上が下がった」といった主張がなされるケースもあります。しかし、企業の売上や利益は様々な要因によって変動するものであり、本当にその従業員の行為だけが原因だったのかは慎重に検討しなければなりません。請求額が数百万円に及ぶケースもありますが、会社側が損害との因果関係を十分に立証できないことも少なくありません。
高額な請求ほど、その根拠を冷静に確認する必要があります。
現金不足・レジ誤差・在庫不足を理由に請求された
小売業や飲食業では、レジ誤差や在庫不足を理由に従業員へ負担を求めるケースがあります。
現場によっては、「不足分は従業員が補填する」という慣習が残っていることもあります。
しかし、本当に特定の従業員だけに責任があるのかは別問題です。複数人がレジを利用している場合や、管理体制そのものに問題がある場合には、個人責任を認めることが難しいケースもあります。
また、こうした不足分を給与から自動的に控除している場合には、別途法的な問題が生じる可能性があります。
退職後に突然損害賠償を請求された
退職後になって会社から請求を受けるケースもあります。
内容としては、業務上のミス、顧客対応の損害、備品の未返却、研修費用、違約金など様々です。特に退職時にトラブルがあった場合には、退職後に請求が行われることがあります。
もっとも、退職したからといって会社が自由に請求できるわけではありません。請求の根拠が曖昧であったり、感情的な対立が背景にあったりするケースも少なくありません。また、退職時に署名した合意書や念書の内容によっては争点となることもあります。
退職後に会社から請求を受けた場合は、焦って対応するのではなく、請求内容や証拠を十分に確認した上で対応方針を検討することが重要です。
退職を引き止めるための「脅し」として使われることも
会社側が「いま退職するなら、これまでのミスの損害賠償を請求する」「担当案件が終わる前に辞めるなら、売上減少分を払え」と、退職を引き止めるための脅し文句として請求をちらつかせるケースも多発しています。
労働者には職業選択の自由があり、原則として自由に退職することが法的に保障されています。
損害賠償の請求と、退職の自由はまったく別の問題です。会社からの過剰なプレッシャーに屈して、退職を諦める必要はありません。
従業員に対して会社はどこまで請求できるのか
労働者には「報償責任の法理」があります
会社から損害賠償請求を受けた場合に重要となるのが、「報償責任の法理」という考え方です。
会社は従業員を雇用し、その労働によって利益を得ています。そのため、業務遂行の過程で生じる一定のリスクについては、利益を得る会社側も負担すべきであると考えられています。
例えば、営業活動、配送業務、製造作業、接客業務などでは、どれだけ注意していても一定のミスや事故が発生する可能性があります。そのような業務上のリスクをすべて従業員個人に負わせることは適切ではありません。
そのため、従業員にミスがあったとしても、会社が損害の全額を請求できるとは限らないのです。
故意・重過失と単なるミスでは大きく異なります
会社からの請求が認められるかを考える上で重要なのが、従業員の落ち度の程度です。
例えば、故意に会社の備品を壊した、会社のお金を横領した、飲酒運転で事故を起こしたといったケースでは、従業員の責任が重く評価される可能性があります。
一方で、業務中によくある確認漏れや入力ミス、操作ミスなどは、通常の業務遂行の中で発生した過失として扱われることが少なくありません。
裁判所も、単なるミスと悪質な行為を同列には考えていません。そのため、会社から高額な請求を受けた場合でも、まずは自分の行為が法的にどのように評価されるのかを冷静に整理することが重要です。
会社の管理体制や指導体制も考慮されます
損害が発生した原因は、必ずしも従業員個人だけにあるとは限りません。
十分な研修を行わずに危険な業務を担当させていた場合や、人手不足の中で過大な業務を課していた場合、会社側にも責任が認められる可能性があります。
また、現場で同様のミスが繰り返されていたのであれば、業務フローや管理体制そのものに問題があったとも考えられます。
会社から請求を受けた際には、自分のミスだけを見るのではなく、会社側の教育体制や監督体制に問題がなかったかという視点も重要になります。
裁判でも会社の請求が大幅に減額されることがあります
実際の裁判では、会社の請求額がそのまま認められるケースは決して多くありません。
例えば、数百万円の損害を理由に請求が行われたとしても、従業員の責任割合や会社側の管理責任などが考慮され、負担額が大幅に減額されることがあります。
会社としては損害の全額を回収したいと考えるのが当然ですが、裁判所は労働者保護の観点や企業活動のリスク分担という考え方も踏まえて判断します。
そのため、「会社から請求された金額=支払わなければならない金額」ではありません。請求額だけを見て諦めるのではなく、法的に妥当な請求なのかを検討することが大切です。
会社から請求されたときに確認すべきポイント
請求の根拠は書面で示されているか
まず確認したいのは、会社が何を根拠に請求しているのかです。
口頭で「損害が出たから払え」と言われるだけでは、請求の内容が不明確です。どの行為によって損害が発生したのか、どのような法的根拠で請求しているのかを書面で確認しましょう。
請求内容が曖昧なまま支払いを約束するのは避けるべきです。
関連する証拠を消去せずに保存しておく
会社からの請求内容が妥当か否か、本当にご自身だけの責任なのかを判断するためには、客観的な証拠が不可欠です。
手元にある業務上のメールやLINEなどのメッセージ履歴、業務日報、マニュアル、当時のシフト表などは絶対に消去せず、スクリーンショット等で保存しておきましょう。会社から「お前の責任だ」と口頭で言われた場合も、そのやり取りのメモや録音を残しておくことが、後の交渉や法的手続においてご自身を守る重要な材料となります。
損害額の計算根拠は明確か
請求額が本当に正しいのかも重要なポイントです。
修理代の見積書や請求書が存在するのか、会社が主張する売上損失に客観的な根拠があるのかなどを確認する必要があります。会社側が一方的に金額を算出しているだけのケースもありますので、計算過程まで確認することが大切です。
本当に個人の責任といえるのか
損害が発生したとしても、その原因が本当に従業員個人だけにあるとは限りません。
複数人が関与していた業務なのか、上司の指示に従っていただけなのか、会社の業務体制に問題はなかったのかなども検討する必要があります。会社の主張を前提に考えるのではなく、責任の所在を客観的に整理することが重要です。
会社側の管理体制に問題はなかったか
教育不足、マニュアル不備、人員不足、過重労働などが事故やミスの背景にあるケースは少なくありません。
会社には安全配慮義務や適切な指導監督を行う義務があります。そのため、会社側の管理体制に問題があれば、従業員の責任は軽減される可能性があります。
給与・退職金から控除されていないか
会社が請求と同時に給与や退職金から差し引いている場合は注意が必要です。
労働基準法には賃金全額払いの原則があり、会社が一方的に損害額を控除することは原則として認められていません。既に天引きされている場合でも、法的に争う余地があるケースがあります。
誓約書・念書・合意書に署名していないか
会社との間で交わした書類の内容も重要です。
特に、損害賠償に関する合意書や分割払いの誓約書に署名している場合、その内容が争点になることがあります。
もっとも、「もう署名してしまったから手遅れだ」などと諦める必要はありません。署名しているからといって必ず請求が認められるわけではなく、書類の内容や作成経緯(強引に署名させられた、騙されて署名させられたなど)によっては、無効や減額が認められる余地も十分にあります。
既に署名してしまった場合でも、諦める前に一度弁護士に依頼し、内容を確認してもらうことをおすすめします。
親や身元保証人に請求すると言われたら
会社から「あなたが支払わないなら、身元保証人(親や親族)に請求する」と通告され、慌てて支払いを約束してしまう方が少なくありません。
しかし、身元保証人が無条件で全額の責任を負うわけではありません。「身元保証法」という法律により、保証の有効期間(原則3年、最長でも5年)が厳格に定められています。
また、会社側の管理責任も考慮されるため、身元保証人に対する請求額も大幅に制限されるのが一般的です。家族に迷惑をかけたくないという焦りから不当な請求に応じる前に、まずは弁護士へご相談ください。
会社からの請求を受けている場合に弁護士へ相談すべきケース
数十万円以上の請求を受けている
会社からの請求額が高額になるほど、対応を誤った際の影響も大きくなります。
特に数十万円から数百万円規模の請求では、「早く解決したい」という気持ちから安易に支払いを約束してしまう方も少なくありません。しかし、請求額が大きい案件ほど、会社側の主張や損害額の計算方法に争いが生じるケースも多くあります。
高額請求を受けている場合は、自分だけで判断するのではなく、一度法的な見通しを確認することをおすすめします。
内容証明郵便や弁護士名の通知が届いた
会社から内容証明郵便が届いたり、会社代理人の弁護士から通知書が送られてきたりした場合は注意が必要です。
これらは単なる警告ではなく、将来的な訴訟や法的手続を見据えた対応である可能性があります。
もっとも、弁護士名で通知が来たからといって、会社の請求が正しいと決まったわけではありません。むしろ、この段階で適切に反論や交渉を行うことで、有利な解決につながることもあります。
給与や退職金から天引きされた
会社が一方的に給与や退職金から損害額を差し引いている場合は、法的な問題が生じている可能性があります。
実際には「修理代だから当然」「会社のルールだから仕方ない」と説明されることもありますが、それだけで適法になるわけではありません。
既に控除されている場合でも返還を求められるケースがありますので、早めに対応を検討することが重要です。
会社から訴訟を示唆されている
「裁判を起こす」「法的措置を取る」と言われている場合も、早期に弁護士へ相談した方がよいでしょう。
訴訟になった場合、証拠の整理や主張の組み立てが重要になります。実際に訴訟提起されてから動くよりも、その前の段階で準備を進めておく方が有利に対応できるケースは少なくありません。
会社との交渉が行き詰まっている場合も含め、法的手続が視野に入った時点で相談することをおすすめします。
会社から損害賠償請求された場合に弁護士へ相談するメリット
支払義務の有無を法的に検討できる
会社から請求されたからといって、必ず支払義務が発生するわけではありません。
損害の原因、会社側の管理体制、従業員の過失の程度などを踏まえ、本当に支払義務があるのかを法的な観点から検討する必要があります。
請求額が妥当なのか、減額の余地があるのかを判断できることは、弁護士へ相談する大きなメリットです。
会社との直接交渉を任せられる
会社から繰り返し連絡が来たり、支払いを強く求められたりすると、大きな精神的負担になります。
弁護士へ依頼すれば、会社とのやり取りを代理人に任せることができます。ご自身が会社と直接交渉する必要がなくなるため、精神的な負担を大きく軽減できます。
また、感情的な対立を避けながら、法的根拠に基づいた交渉を進めることが可能になります。
内容証明・労働審判・訴訟に対応できる
会社との話し合いで解決できない場合には、内容証明郵便、労働審判、訴訟などの法的手続へ発展することがあります。
こうした場面では、法的知識だけでなく、証拠の整理や主張立証のノウハウも必要になります。
会社側が弁護士を立てている場合には、こちらも早い段階で専門家に相談しておくことが重要です。
未払い残業代や不当解雇もあわせて検討できる
会社から損害賠償請求を受けているケースでは、実は別の労働問題が隠れていることもあります。
例えば、未払い残業代が発生していたり、不当な退職勧奨や解雇が行われていたりするケースです。
会社から請求されている立場だからといって、一方的に不利とは限りません。状況を総合的に検討することで、ご相談者様にとってより有利な解決策が見つかることもあります。
会社から損害賠償請求された方は西村綜合法律事務所へご相談ください
西村綜合法律事務所では、会社からの損害賠償請求、修理代請求、給与天引き、退職後の請求など、労働者側のご相談に対応しております。請求内容の妥当性の検討から会社との交渉、労働審判や訴訟対応まで一貫してサポートいたします。
会社から損害賠償請求を受けてお困りの方は、一人で判断する前に当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が状況を整理し、ご相談者様にとって有利な解決を目指して迅速に対応いたします。
