法人破産(会社破産)を行う際に知っておくべき手続きの流れと注意点

昨今の社会情勢の中では、経営者として、経営上の理由から債務の整理をせざるをえない局面に至ってしまうこともあるかもしれません。
債務整理には、法人破産、私的整理、事業再生等の手段がありますが、本記事では、その中でも法人破産を選択する際に知っておくべき手続の流れと注意点を解説します。

法人破産に関する基礎知識

まずは、法人破産に関する基礎知識を確認しましょう。

法人の破産手続とは

破産とは、債務整理の一つの手段です。債権者との個別の交渉による私的整理、裁判所が関与する法的整理のうち、後者に位置づけられます。そして、債務整理には再建型と清算型という二つの類型があるところ、清算型に位置づけられます。

破産手続の内容自体は、個人破産の場合も法人破産の場合も相違ありません。破産法も、破産主体が個人の場合と法人の場合とを基本的には区別せずに規定しています。

ただ、法人の場合、破産手続開始決定がなされたことは法人の解散事由とされており(会社法471条5項)、破産手続が終了すると法人格が消滅します(破産法35条)。法人格が消滅するということは、その会社は権利義務の主体となることができなくなるということです。一方で、個人が破産手続をしたとしても、その後、権利義務の主体となることができなくなるわけではありません。この違いから、免責制度や自由財産制度は個人の破産者についてのみ規定されています。

このように、法人が破産する場合には法人格が消滅することから、法人破産という選択肢は最後の手段といえます。

破産手続が開始されると、開始当時に債務者(=破産者)が有していた財産は破産財団となり、破産管財人によって換価されます。換価された破産財団が債権者に配当されると、破産手続は終了します。

破産を行うことでの変化

破産を行う、すなわち、破産手続を開始する旨の決定がされると、債務者は、破産財団に属する財産に対する管理処分権を喪失する(同78条1項)、個別的な権利行使が制限される(同2条5項、100条1項)等の変化が生じます。

また、裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、官報に掲載する方法(同32条1項柱書)で、決定主文(同32条1項1号)、破産管財人の氏名又は名称(同項2号)、債権届出期間、財産状況報告集会の期日、一般調査機関又は一般調査期日(同項3号)等の事項につき、公告を行います(同10条1項)。さらに、裁判所は、破産管財人、破産者、知れている破産債権者、知れている財産所持者等には、公告すべき事項を通知します(同32条3項)。

このように、破産開始決定がなされると、その事実は周知されることとなります。

倒産と破産の違い

「倒産」と「破産」とは、よく似た言葉であり、一般的には同じ意味で使われているかもしれません。しかし、法律的には異なる意味で用いられています。

破産とは、債務者が支払不能(債務者が法人の場合は支払不能又は債務超過)となり、債務者等の申立てによって破産手続が開始されるに至ったことをいいます。

一方、倒産とは、破産には至らなくとも、経済的に破綻し、破産のおそれがあるなど、債務者が従来どおりの経済活動をすることが困難又は不可能となるに至ったことを倒産といいます。倒産の状態に至ったとしても、必ずしも破産手続をしなければならないわけではありません。実際の状況にもよりますが、民事再生や私的債務整理を選択し、再建を試みることも可能です。

法人破産を行う際の手続の流れ

それでは、法人破産を行う際の手続の流れを説明します。

現状の従業員・取引先への対応

破産手続を開始するにあたっては、既存の契約関係を処理することが必要となります。典型的なものは、従業員との雇用契約、取引先との売買や請負、賃貸借等の事業に伴う契約です。

債権者への破産の通知

債権者の方々へ破産をする見込みであることを通知します。

通知の時期について、支払不能または債務超過に至った段階でするのか、破産手続開始決定の申立ての直前にするのかという判断が必要です。支払不能または債務超過に至った時点から申立てまでには一定の期間を要することから、仮に支払不能または債務超過に至った時点で通知を送るとすると、申立てまでの間に債権者が不当な取り立てを行い、債務者の残余財産が散逸する可能性も否定できません。場合によっては、通知自体をしないことも選択肢として考慮する必要があります。

通知を送り、債権者の協力が得られる場合には、残余財産が散逸しない範囲で、既存の契約を解除することになります。もっとも、残余財産の確保のため、既存の契約の処理を破産管財人の処理に委ねるべきケースもあり、申立前の安易な処理は禁物です。

従業員の解雇

破産手続開始決定の申立てに先立つ事業停止の時点で、従業員を解雇することが原則です。その後の破産手続の流れや未払賃金、退職金の有無等について説明ができるように準備をしておく必要があります。また、必要以上の混乱を避けるためにも、事業停止が近いことは一般従業員には秘密にしておくべきでしょう。一方で、人員整理や給与処理を進めるために、人事や経理担当者には必要最低限の範囲で事情を説明し、協力を取り付けておくことも必要となりますが、これは会社の規模によって異なることとなります。

未払賃金がある場合には未払賃金を支払う必要があり、退職にあたって退職金も支払う必要があります。仮に、従業員を即日解雇する場合には、解雇予告手当(労働基準法20条1項)を支払う必要があります。

もっとも、破産を検討する程度に経済的に困窮している以上、従業員への賃金を支払うことができない場合もありうるでしょう。こうした場合に備えて、未払賃金の立替払の制度があります。要件を満たす場合には、未払賃金のうち一定額が従業員に支払われ、従業員の生活が保たれることとなります。従業員の解雇にあたって、こうした制度について説明することも必須といえます。

破産手続開始決定の申立て

既存の契約の処理や債権者対応と並行して、破産手続開始決定の申立ての準備を進めます。

申立書・必要書類の準備

破産手続開始の申立ては書面ですることとされている(破産法20条1項)ため、申立書を作成します。申立書には、申立人の氏名又は名称や住所の他、破産手続開始の原因となる事実や、債務者の収入および支出の状況並びに資産および負債、破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情等を記載します(破産規則13条)。

申立書には、所定の書類を添付する必要があります。具体的には債権者一覧表や、住民票ないし登記事項証明書、財産目録(同14条)、その他債務者の債権債務や銀行取引の履歴を証する文書を収集し、申立書に添付することとなります。

裁判所への破産申し立て

必要書類を準備できたら、管轄裁判所へ申立てをします。

なお、こうした書類とは別に、申立てに当たって、申立手数料や破産手続に要する費用(予納金)を納付する必要があります。これは、官報公告の費用や、債権者への通知費用、管財人への報酬を含みます。予納金の金額は、債務総額や法人の規模、管轄裁判所によっても異なりますが、少なくとも数十万円という運用をしている裁判所が多いでしょう。東京地裁では、法人破産の場合には最低でも70万円の予納金が必要とされています。

各種手続き

破産手続開始決定後の手続について説明します。

破産管財人の法人財産の売却

開始決定後は、破産管財人が債務者の有していた財産の管理処分を行うこととなります。破産管財人は、なるべく破産財団が増殖し、債権者への配当原資が増加するように、財産を処分していくこととなります。

この際に、会社代表者や事情の分かる方に対して、破産管財人が財産の管理処分に必要な範囲で説明を求めることがあります。申立人は、こうした破産管財人の依頼にも誠実に対応するため、会社事情に明るい方に協力を取り付けておくことも考えなければなりません。

債権者集会での破産経緯の説明・債権者への配当

破産法上、債権者に対して、債務者や破産管財人が、所定の事項を説明する機会を設けることが定められており、これを債権者集会といいます。債権者集会では、債務者は、破産に至る経緯等の説明や、債権者からの質問に誠実に対応することが求められます。また、破産管財人の換価状況等も報告されることとなります。

換価が終了すると、破産管財人は、債権者に対し、債権額に応じて比例的かつ平等に配当を行います。

配当が終了する、あるいは換価をしても配当するだけの財団が形成できなかった場合には、破産手続は終了します。実務上、配当に至る事案は多くありません。

法人破産を行う際の注意点

以上、法人破産手続について概略をご紹介しました。最後に、法人破産を行う際に注意するべき点をご案内します。

経営者自身の財産への影響

基本的には、経営者個人名義の財産について、法人破産との関係では影響はありません。法的な権利義務主体として、経営者個人と法人とは別個の主体として扱われるためです。

一方で、法人名義の債務について経営者が保証人あるいは連帯保証人となっている場合、債権者から保証契約に基づく履行請求がされることとなります。こうした場合に、法人と代表者が同時に破産することを選択せざるを得ないこととなります。また、経営者が、会社に対して代表取締役としての損害賠償責任を負う場合、破産管財人から請求されることがありえます。

債権者対応

破産をすることで、債権者に一定程度、負担を強いることとなります。

債権者としても、債務者を信頼して取引をしていた以上、不満を抱くこともやむをえないでしょう。こうした債権者に対しては、真摯に対応し、破産を選択した経緯を丁寧に説明し、理解を求めていくしかありません。財産隠し等の不誠実な言動は厳に差し控えなくてはなりません。

各種手続を進める信頼できる弁護士への依頼

上記のように、破産手続は申立て前の段階から周到な準備が必要で、仮に申立て前の段階で行ってしまったことの影響を後に覆すことはできません。また、経営者の方が、通常業務や私生活の傍らで様々な事務処理を行っていくことは非常に困難といえるでしょう。さらに、破産手続中は破産管財人や裁判所とのやり取りも必須となり、破産管財人には通常、弁護士が選任されます。破産管財人や裁判所とやり取りをするうえでも、破産手続を弁護士に依頼することのメリットは非常に大きいと言えます。

法人破産に関するご相談は弁護士法人西村綜合法律事務所へ。

会社の規模が大きくなるほど、契約関係は複雑かつ多数に及ぶことになります。破産処理は法的業務の中でも「法律問題のるつぼ」と言われており、雇用契約、売買契約、賃貸借契約、請負契約等の様々な法律関係を処理する必要があります。それに伴って、トラブルが発生することも少なくありません。

こうした法律関係を適切に処理し、法人破産をスムーズに進めるためには、専門的な知識と経験が必要となります。当事務所では、法人破産にかかわる専門的な知識と経験をもとに、経営者の方々に適切な法的サービスを提供いたします。法人破産に関してお困りのことがありましたら、ご相談ください。