きつい!60時間を超える残業代の違法性や未払い残業代請求について解説
この記事では、月60時間の残業が法律的にどのような扱いになるのか、その違法性や対策、そして残業代が適切に支払われていない場合の対応について詳しく解説します。残業時間が長く、精神的・身体的な負担を感じている方にとって重要なポイントを押さえ、法的な観点から問題解決に役立つ情報を解説いたします。
残業60時間はきつい!これって違法じゃないの?
36協定では原則として月45時間が上限です
労働基準法に基づく「36協定」では、残業時間の原則的な上限が月45時間と定められています。これは、労働者が過度な時間外労働による負担を避けるための基準です。
企業は上記の範囲内で残業を命じることができますが、やむを得ない場合には特別条項を設けることで45時間を超える残業を命じることが可能になります。
月45時間以上の残業が認められる条件
月45時間を超える残業が認められるのは、特別な条件を満たした場合です。
(1) 36協定で特別条項を定め労使で合意していること
企業が特別条項を締結している場合に限り、45時間を超える残業が可能になります。この特別条項は、労使間での合意が前提です。
(2) 繁忙期やトラブル対応等の臨時的な必要性があること
特別条項は、繁忙期や業務上のトラブル対応など、一時的かつ臨時的な状況に対応するために認められています。常態的に長時間労働が続くことは、労働法違反にあたる可能性があります。
特別条項があっても無制限ではありません!
たとえ特別条項を締結していても、残業は無制限に認められるわけではありません。以下の制限が適用されます。
- 残業は年720時間以内
- 残業及び休日労働の合計が、複数月(2~6ヶ月)のすべてで平均80時間以内
- 残業及び休日労働の合計が、1ヶ月当たり100時間未満
- 1ヶ月当たり45時間を超えられるのは1年につき6ヶ月以内
このように、労働者の健康を守るために、長時間労働に対する厳しい制限が設けられています。月60時間の残業はこれらの基準に照らしても違法となる可能性が高い場合があるため、注意が必要です。
月60時間を超える場合、時間外労働の割増率が25%から50%に上がります
2010年の労働基準法改正により、月60時間を超える時間外労働に対しては、通常の25%ではなく、50%の割増率で計算した賃金が支払われる必要があります。
これは、大企業だけでなく、2023年4月1日からは中小企業にも適用されています。もし60時間を超える残業代が通常の25%のままで計算されている場合、その残業代は適切に支払われていない可能性があるため、見直しが必要です。
60時間以上の残業が違法となるケース
36協定および特別条項を締結していない
36協定を締結していない企業が残業を命じている場合、たとえ45時間以下であっても違法となる可能性があります。
また、36協定を締結していても、特別条項がなく、45時間を超える残業を命じている場合は法律違反の可能性があります。
特別条項に違反している
特別条項を定めていたとしても、次のルールに違反する残業は違法です。
- 1ヶ月の時間外労働と休日労働の合計時間数が100時間未満であること
- 1年間の時間外労働が720時間以内であること
- 複数月平均で80時間以内の残業時間であること
- 残業45時間を超えられるのは年間6ヶ月までであること
これらの基準を超えている場合、労働者に対する負担が過大であり、企業に対する労働基準法違反の処罰対象となる可能性があります。
サービス残業になっており残業代を支払っていない
残業の実態はあるものの、会社側がタイムカードの打刻をさせずに労働させている場合、サービス残業に該当します。
例えば、次のような状況は違法性が高く、未払い残業代の請求ができる場合がありあす。
- 定時を過ぎたあと、タイムカードを切って業務を続けている
- 15分、30分といった端数を切り捨てて残業時間を計算されてしまっている
- 一定の残業時間を超えると、それ以上の残業代が支給されない
- 研修や自己研鑽といった名目で、給与が発生しない拘束時間がある
- 就業時間より早く出社しても残業代は支給されない
- 仕事を持ち帰り自宅で作業している
60時間を超えた分の残業代の割増率が25%のままになっている
先述の通り、月60時間を超える残業は50%の割増率で支払う必要があります。
これを守っていない企業は違法な残業代計算を行っている可能性があり、速やかに対応が必要です。
残業代が支払われていない場合の対処法
証拠を集めて会社と話し合う
まずは、自分の残業時間を証明できる証拠を集めることです。残業代の支払いが行われていないと主張するためには、実際にどれだけの時間働いたかを示す具体的な証拠が必要です。
例えば、以下のような証拠が役立ちます:
- タイムカード:勤務時間が正確に記録されているタイムカードは、残業時間を証明する直接的な証拠です。もし、タイムカードに改ざんがある場合は、その不正を指摘することも重要です。
- パソコンのログイン・ログアウト履歴:パソコンの操作時間が労働時間と一致するケースでは、この履歴が残業を示す証拠となります。特に、定時にタイムカードを押させられた後、PCの使用時間が記録されている場合は、サービス残業を裏付ける証拠として有効です。
- 日報や業務メールの送信履歴:業務日報や、仕事のやり取りを示すメールの送信時間も労働時間を証明する手段となります。例えば、夜遅くに送信された業務メールがあれば、その時間まで働いていた証拠になります。
これらの証拠をもとに、会社に対して正式に残業代の支払いを求めましょう。特に、労働基準法違反の可能性がある場合は、迅速な対応が必要です。
話し合いが成立しない場合は、内容証明郵便による請求を行う
もし会社との話し合いが進展しない、あるいは会社が残業代の支払いを拒否している場合は、内容証明郵便を使って正式に残業代の請求を行うことが有効です。
内容証明郵便は、請求内容が正式に送付された日付と内容が明確に記録されるため、法的な証拠力を持ちます。これは、裁判所に提出する際にも有効な書類となり、会社側も無視できないプレッシャーとなります。
例えば、「〇〇年〇月〇日から〇〇年〇月〇日までの間、残業時間は〇〇時間であり、その分の残業代として〇〇円を支払ってください」という形で具体的に請求金額と労働時間を明示することが大切です。内容証明郵便を送ることで、会社が改めて法的義務を意識し、対応を早める可能性があります。
残業代請求に強い弁護士に相談する
上記の方法でも会社が対応しない、もしくは解決に至らない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は労働法に精通しており、あなたの代わりに証拠を整理し、適切な請求方法を選択してくれます。
たとえば、残業代の支払いを巡るケースでは、弁護士が会社側と交渉を行い、裁判を通じて残業代を取り戻すことも可能です。また、労働審判や訴訟に至った場合にも、専門知識を持つ弁護士がサポートすることで、より有利な結果を引き出せる可能性が高まります。
個人で企業相手に交渉を続けると、プレッシャーを感じたり、疲弊してしまうこともあります。弁護士に依頼することで、こうした負担から解放され、ストレスなく残業代の請求を進めることができるでしょう。特に、残業代請求の証拠を集める段階で不安や不明点があれば、早めに弁護士に相談することが得策です。
未払い残業代を弁護士に相談するメリット
残業代の回収可能性が高まる他、素早い解決に繋がる
弁護士に相談することで、未払い残業代の回収可能性は大きく高まります。
労働者が個人で未払い残業代を請求しようとしても、会社側がそれを軽視したり、交渉がうまくいかないケースが多々あります。たとえば、「もう少し待ってくれ」「会社の状況が厳しい」などの理由で話し合いが先延ばしにされることも少なくありません。
しかし、弁護士が介入することで、会社側も法律に基づいた請求として真剣に対応せざるを得なくなります。弁護士は残業代請求に必要な手続きを迅速に進め、適切な対応を会社に求めるため、問題が長引かずに解決することが期待できます。実際、多くの企業は弁護士が関与した時点で話し合いに前向きになり、交渉が円滑に進展することが多いのです。
開示請求等により証拠を集めやすくなる
弁護士は、法律に基づいて企業に対して証拠の開示請求を行うことができます。
たとえば、タイムカードの記録や社内システムのログイン・ログアウトのデータ、建物の入退館履歴などは、企業側で保管されていることが多いものです。しかし、個人ではこれらの情報を取得することが難しく、会社側が提供に消極的である、場合によってはデータを改ざんするリスクも考えられます。
特に退職後であれば、メールの履歴や業務日報にアクセスすることができなくなり、証拠が不足する状況に陥りがちです。こうしたケースでも、弁護士の力を借りることで、法的な手続きを通じて証拠を企業から引き出すことが可能です。過去の勤怠データや、残業時間を示す各種記録が揃えば、未払い残業代の請求における成功率も格段に高まるでしょう。
弁護士は入るだけで会社側の対応が変わることも!
弁護士が関与するだけで、会社側の態度が大きく変わるケースは少なくありません。
これまで労働者の要求を軽視していた企業が、法的な専門家の介入により真剣に対応し始めるという事例は多く存在します。
たとえば、従業員が直接請求を行っても「あとで検討します」「今は忙しい」といった曖昧な返答で終わってしまう場合でも、弁護士が正式に介入すると、企業側は法的に正当な対応を求められることになります。弁護士は法律の知識に基づいて、企業が支払うべき未払い残業代を正確に算出し、要求を強力にサポートします。そのため、交渉が円滑に進む可能性が高まり、迅速な解決に繋がることが期待できます。
会社との交渉に不安を感じる場合や解決の遅れによるストレスを避けたい場合は、早めに弁護士に相談することで、労働者にとって最も有利な結果を目指すことができるでしょう。
残業代のトラブルは弁護士へご相談下さい
残業代が適切に支払われていない場合、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
西村綜合法律事務所では、初回相談が無料ですので、お気軽にご連絡ください。オンライン相談も可能なため、遠方の方やお忙しい方でも対応可能です。専門の弁護士が迅速かつ適切なアドバイスを提供し、ご相談者様にとって有利な解決を目指します。