残業代の適用除外って?法的に支給されるケース、されないケースを解説

今回は残業代の適用除外について解説するとともに、法的に残業代が支給されない業務の具体例、適用除外でも残業代請求が可能なケースなどについて解説いたします。

そもそも残業代の適用除外ってなに?

残業代の適用除外とは、法律により特定の業務や職種において、残業代の支給が義務付けられていない場合を指します。

これは、労働基準法によって規定されており、適用除外となる業務や職種には明確な基準と理由があります。しかし、適用除外が適用される場合でも、深夜労働に対する割増賃金の支払いなど、一部の保護措置は維持されています。

法的に残業代が支給されない業務とその理由

農業・水産業・畜産業・養蚕業

これらの業種は、自然条件や季節によって労働時間が大きく変動するため、残業代の適用除外とされています。

例えば、農業では収穫時期に一時的に労働時間が増えることがありますが、それ以外の時期は比較的少ない労働時間で済むことが多いです。また、水産業では天候や海の状態によって出漁のタイミングが変わるため、労働時間の管理が難しいという現実があります。

しかし、これらの業種でも深夜労働に対する割増賃金は支給されますので、漁業で深夜に出漁する場合や、農業で深夜に作業を行う場合は、深夜割増賃金が適用されます。

監視業務

監視業務とは、特定の場所での待機や施設の監視などを行う業務を指します。

具体的な例としては、学校や病院の守衛が挙げられます。これらの業務は、まとまった時間に集中的に業務を行う性質がなく、待機時間が長いことが特徴です。例えば、病院の夜間守衛は、夜間の間ずっと警備を行っているわけではなく、実際に行動する時間は限られています。

このような業務では、一定の労働時間が確保されないため、労働基準法に基づき、残業代の適用除外となります。

断続的労働

断続的労働とは、業務の間に長時間の休憩や待機時間が含まれる労働形態です。

ビルの管理人や宿直勤務が典型的な例です。ビル管理人は、建物の管理を行いながら、長時間の待機時間を含むことが多く、宿直勤務では、勤務中に何時間かは実際の業務がなく、待機している時間が多いです。例えば、夜間に建物のトラブルが発生した時のみ対応する宿直者は、多くの時間を待機して過ごします。

このような労働形態では、実労働時間の計算が困難であるため、労働基準法上、残業代の適用除外とされています。

管理監督者にあたる場合

管理監督者として認められるためには、以下の条件を満たす必要があります:

  1. 経営に関与していること:企業の経営方針や運営に対して重要な決定権を持っていること。例えば、部長や役員が該当します。
  2. 業務内容について大きな裁量があること:業務の進め方やスケジュール管理について、自らの判断で進めることができること。例えば、プロジェクトのリーダーやマネージャーが該当します。
  3. 労働時間の管理について自由裁量があること:出退勤の時間や業務の時間管理が自己判断で行われること。通常の従業員とは異なり、時間管理が厳密ではないことが特徴です。
  4. 待遇が一般社員と比べて高いこと:給与や待遇が一般の従業員よりも高い水準であること。例えば、役職手当が支給されていることが一つの指標となります。

これらの条件を満たして初めて、管理監督者として認められ、残業代の適用除外となります。

例えば、ある企業の部長が、自らの判断で部下の業務を管理し、プロジェクトの方向性を決定する一方で、通常の出退勤時間に縛られない働き方をしている場合、この部長は管理監督者として認められるでしょう。

機密の事務を取り扱う者

「機密の事務を取り扱う者」とは、「秘書その他職種が経営者または監督もしくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者」をいいます。

この場合も名称により形式的に判断するのではなく、職務内容や勤務実態を総合的に考慮して判断すべきとされています。

適用除外であっても残業代請求できるケースも存在します

(1)職務の実態が名ばかり管理職だった

名ばかり管理職とは、実際には管理監督者としての権限や責任がないにもかかわらず、形式的にその地位にあるとされる場合をいいます。

このような場合、労働基準法に基づき、残業代を請求できる可能性があります。

(2)深夜割増賃金の支払いがなかった

深夜労働に対しては、適用除外の業務であっても割増賃金の支払いが義務付けられています。

もし深夜割増賃金が支払われていない場合は、未払い分を請求することができます。

未払い残業代を会社に請求するにはどうすればいい?

まずは会社と交渉しましょう

未払い残業代を請求する際には、まず会社と直接交渉することが重要です。

給与明細や労働時間の記録をもとに、具体的な金額を提示し、誠実に話し合いを進めます。

交渉が決裂すれば労働審判を申し立てましょう

もし交渉がまとまらない場合、労働審判を申し立てることができます。

労働審判は、裁判所が関与して解決するための手続きで、裁判に比べて短期間で終わることが特徴です。

最終的には訴訟へと進みます

労働審判でも解決しない場合は、最終的に訴訟へと進むことができます。

裁判所に対して残業代の未払いを訴え、法的に権利を主張します。

弁護士への依頼もご検討ください

残業代請求の手続きは複雑で、さらに会社との感情的な対立を発生させる可能性が高いです。

当事者にとっては大きなストレスがかかりますので、弁護士に依頼することもご検討ください。弁護士が法的な主張を組み立て、円滑な交渉や手続きを代理で行います。

残業代請求を弁護士に相談するメリット

会社との交渉を一任できる

弁護士に依頼することで、会社との交渉を一任することができます。これにより、直接の対立を避け、専門的な知識を持つ弁護士が代わりに交渉を行います。

証拠収集のアドバイスを受けることができる

弁護士は、残業代請求に必要な証拠の収集方法についてアドバイスを提供します。具体的な証拠を確保することで、請求の成功率を高めることができます。

審判や訴訟の手続きを迅速に進めることができる

弁護士は、労働審判や訴訟の手続きをスムーズに進めるためのノウハウを持っています。複雑な手続きを迅速に進め、早期解決を目指すことができます。

残業代請求に関するお悩みは弁護士にご相談ください

西村綜合法律事務所は、残業代請求に関する豊富な経験を持つ弁護士が在籍しています。初回相談は無料で、オンライン面談も可能ですので、遠方にお住まいの方やご多忙の方でも安心してご利用いただけます。

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