貰えるはずの残業代は毎月消えています!未払い残業代の時効と請求方法を弁護士が徹底解説

今回は、未払い残業代の請求期限(時効)やサービス残業の実態、残業代請求に必要な証拠の集め方、そして実際に残業代を取り戻すための手続きについて詳しく説明します。

また、弁護士に依頼する場合のメリットについてもお伝えいたしますので、未払い残業代でお困りの方はぜひご覧ください。

未払い残業代の請求期限(時効)は3年!!

時効を過ぎた残業代はどうなる?

残業代請求には時効があり、現在は令和2年3月31日以降に支払期日が到来する賃金の請求権について「行使することができるときから三年間」です。

これは、令和2年民法改正に伴い、労働基準法の時効期間も「行使することができるときから五年間」とされましたが(労基法115条、115条の2参照)、経過措置により、「当分の間」はこれを「三年間」とする旨も定められました(附則143条3項)。いずれは民法と同様に「五年間」となることが想定されます。

貰えるはずだった残業代は毎月消えていきます。支払われていない残業代は、支払期日から3年経過すると請求できなくなるため、未払い残業代を取り戻すためには早期に請求手続きをすることが必要です。

残業代を支払われていない場合は弁護士へご相談ください

残業代が支払われていない場合、時効が迫っている場合でも、弁護士に相談することにより、適切な措置をとることができます。一刻も早く弁護士へ相談することをお勧めします。

サービス残業(残業代の未払い)のよくあるケース

定時に打刻させられるが、帰らせてもらえない

表向きには定時で退社したように見せかけ、タイムカードを定時で打刻させた後も業務を続けさせられるケースは、いわゆる「サービス残業」としてしばしば問題となります。

例えば、定時にタイムカードを押させてから会議を行ったり、追加の業務を割り当てたりすることがあり、労働者は退社時間が記録されていないため、残業代を請求することができない状況に置かれます。

しかし、労働時間は実際に働いた時間が基準となるため、定時後の作業時間は残業として算定されるべきです。このような違法な取り扱いに対しては、適切な証拠を集めることにより、未払い残業代を請求することが可能です。

みなし残業を悪用され、超過分の残業代が出ない

みなし残業は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含める制度で、多くの企業で採用されています。

しかし、この制度が悪用され、みなし労働時間を超えた残業代が支払われないケースも見られます。例えば、みなし残業が30時間までとされていても、実際には50時間働かされ、その超過分の20時間について残業代が支払われない場合などです。

法律では、みなし労働時間を超えた部分についても正当な残業代が支払われるべきであり、これに反する企業の行為は違法です。みなし残業の仕組み自体を理解しておくことで、会社が不当な扱いをしていないかを確認しましょう。

始業前に早く出社させ、打刻させない

始業前に早く出社するよう指示され、打刻しないまま業務を開始させられることも、サービス残業の典型的なケースです。

例えば、上司から「明日の準備があるから早く来て」と求められたが、タイムカードは始業時刻に合わせて押させられるような場合です。労働時間は出社して実際に業務を開始した時点からカウントされるべきであり、タイムカードを打刻させないようにする企業の行為は、労働者の権利を侵害しています。

このような状況では、他の証拠をもとに実際の出社時刻を証明し、未払い残業代を請求することが可能です。

自宅で持ち帰り残業を強いられる

自宅での持ち帰り業務もまた、残業代が支払われるべき労働時間に該当します。

例えば、家で資料作成やメール対応などを行うケースがこれに該当します。会社が自宅での作業を認識していない場合でも、実際に業務を行っている以上、それは労働時間として算定されるべきです。

特に、上司からの指示や納期が厳しい状況で持ち帰り残業をせざるを得ない場合は、会社の指揮命令下にあるとみなされ、残業代の対象となる可能性があります。

1分単位で記録せず、30分や1時間に満たない端数を切り捨てている

労働時間を端数切り捨てで計算している企業は違法行為を行っている可能性があります。

労働基準法では、労働時間は1分単位で計算されなければならないため、たとえ数分であっても、その時間は労働時間として算定され、残業代が支払われるべきです。

例えば、毎日10分間の残業が発生していても、これを無視して30分単位で切り捨てている場合、労働者は本来支払われるべき賃金を受け取れていないことになります。通達上、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業のそれぞれの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが認められていますが、1か月単位で、切り上げと切り捨てをセットにした場合のみ許容されており、それ以外の日ごとの切り捨てや切り捨てのみの処理は違法です。

残業代の請求に必要な証拠

労働時間が明確に分かるもの

未払い残業代を請求する際には、実際の労働時間を証明できる証拠が必要不可欠です。

労働時間を正確に記録したデータを示すことにより、残業代の未払いがあったかどうかを客観的に証明することができます。

以下に、具体的な証拠としてよく用いられるものを解説します。

例1 タイムカードや勤怠管理ソフトのデータ

最も代表的な証拠として挙げられるのが、タイムカード勤怠管理ソフトによる記録です。

これらは労働時間を正確に記録するためのシステムとしてほとんどの企業で導入されており、打刻された出退勤時刻が正確に残ります。例えば、タイムカードに打刻された労働時間と実際に支払われた給与の労働時間が一致しない場合、会社が未払い残業代を意図的に隠している可能性が疑われます。

タイムカードの労働時間に基づき、法律に基づいた支払いを求めることができるでしょう。

例2 オフィスの入退館記録

オフィスのビルや会社の建物には、セキュリティシステムが導入されている場合が多く、入退館記録が残されています。

特に、タイムカードとオフィスのセキュリティシステムが連動していない場合でも、建物への入退館記録を証拠として利用できます。

例えば、定時にタイムカードを打刻させられ、その後もオフィスに滞在して働き続けていた場合、入退館記録とタイムカードの時間に差異が生じます。入退館記録に基づき、「実際には定時後も働いていた」ことを証明することにより、未払い残業代を請求することが可能です。

例3 PCのログイン・ログアウト時刻の記録

パソコンのログイン・ログアウト時刻も労働時間を証明する重要な証拠となります。

特に、タイムカードが正しく記録されていない場合や、定時後も業務を続けていた場合、パソコンの操作記録は有効です。例えば、定時に打刻した後もパソコンで業務を続けていた場合、ログインとログアウトの時間が残業時間を証明する手段となります。

ログイン・ログアウト時刻の記録に基づき、サービス残業の実態を明確に示すことができるでしょう。

例4 メールの送信時間

業務に関するメールの送信時間も、労働時間を証明する有効な証拠となります。

例えば、定時後に上司や取引先にメールを送信した時間が残っていれば、その時点まで業務を行っていたことが推認されます。メールの送信履歴が多ければ多いほど、残業時間が積み重なっていたことを証明しやすくなります。

特に、上司や他の同僚から送信されたメールの返信をしている場合は、「業務命令によって残業が必要だった」として主張しやすくなります。

例5 タコグラフ(運送業)

運送業では、タコグラフ(運行記録計)が労働時間の証拠として有効です。タコグラフには、運転時間や休憩時間、走行距離などが詳細に記録されており、運転時間に基づき労働時間を計算することが可能です。

例えば、タコグラフの記録が勤務表と食い違っている場合、実際の労働時間が過小に報告されていることが疑われます。

特に運送業界では、長時間労働が問題視されており、このデータは確実な証拠として法的手続きにおいても有効です。

証拠が手元にない場合はどうすればいい?

証拠保全の手続きで開示させられる可能性があります

会社が保持しているタイムカードや勤怠データが手元にない場合、労働者側からでもこれらを入手できる可能性があります。

そのためには、裁判所に対して証拠保全の申立てを行い、会社に対して証拠の開示を求める手続きを取ります。この手続きにおいて、要件を満たすときには会社が勤怠記録などを提出しなければならないため、証拠が手元にない場合でも残業代請求に向けて証拠を集めることが可能です。

実際に裁判所に証拠開示を求めるためには、弁護士のサポートが不可欠です。

弁護士は、会社が所持しているどのようなデータを開示すべきかを把握しており、適切な方法で証拠保全を進めるための準備をサポートしてくれます。例えば、タイムカードだけでなく、オフィスの入退本記録やPCのログイン・ログアウト時刻といった様々な証拠を同時に請求することが可能です。

退職前にできるだけ証拠を集めることが重要です

未払い残業代を請求する際、退職前にできる限り証拠を集めておくことが重要です。退職後では、会社側からの協力が得られにくくなる場合があるため、在職中に収集できる証拠は全て確保しておくことが望ましいです。

例えば、自分のタイムカードのコピーを取得する、メールの送信履歴やPCの操作履歴を保存するなどが考えられます。また、上司からの指示内容が残っているメールやチャットのログも、残業が必要だったことを証明する重要な資料になります。これらの証拠は、裁判や労働審判での交渉において非常に有効です。

一方で、証拠が不十分な状態で退職してしまうと、その後の残業代請求が困難になることもあります。そのため、退職を考えている方や、残業代の未払いが疑われる場合には、早期に弁護士に相談して、どのような証拠を収集すべきかの具体的なアドバイスを受けることをお勧めします。

サービス残業に対し残業代請求をする際の流れ

(1) 証拠確保と残業代の計算

まずは、証拠を収集し、どれだけの残業代が未払いになっているかを正確に計算します。ここでしっかりとした計算を行うことが、その後の交渉に大きく影響します。

(2) 会社と交渉

証拠をもとに、会社との交渉を進めます。この段階で弁護士が代理で交渉に当たることで、効果的に話を進めることができます。

(3) 交渉が決裂すれば、審判・訴訟に進みます

交渉が成立しない場合、労働審判や訴訟を通じて、未払い残業代を請求することができます。裁判では、証拠が重要な役割を果たしますので、早めに準備をしておくことが大切です。

残業代請求を弁護士に相談するメリット

残業代を取り戻せる可能性が高まる

弁護士に依頼することにより、証拠の確保や交渉が当事者間で行うより円滑に進み、未払い残業代を取り戻せる可能性が格段に高まります。

証拠の収集・確保がしやすくなる

弁護士は、証拠保全手続きの手配や証拠の収集に精通しており、会社に対して証拠を開示させる手続きを行うことができます。

会社との交渉を一任でき、審判・訴訟に発展しても戦うことができる

弁護士に依頼することで、会社との交渉を全て任せることができ、また、交渉が決裂しても労働審判や訴訟に進んで未払い分を請求することが可能です。弁護士がサポートすることで、労働者側が安心して進めることができます。

残業代請求のお悩みは西村綜合法律事務所へご相談ください

残業代の未払いは、個人で対応することが難しく、弁護士へ相談する必要性が高い案件です。

当事務所では、未払い残業代の請求に関する相談を無料で承っております。オンライン面談も可能ですので、遠方にお住まいの方やお忙しい方も、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。