他の従業員の不注意によって怪我をした方へ

他の従業員の不注意によって怪我をしてしまった場合、どのような対応が正しいのでしょうか?会社に対して損害賠償を請求すべきなのか、他の従業員に対して請求すべきなのか、それとも両方に対して請求することができるのか、素人目には判断が難しいものです。

そこで今回は、会社の上司や同僚といった、他の従業員の不注意によって怪我をしてしまった場合、どのように損害賠償請求を進めていけば良いのかを解説していきます。

 

他の従業員による労災発生ケース

基本的に労災被害に遭った場合は、労災保険の給付を受け取ることが可能です。

しかし、以下のような、他の従業員が原因によって起きた労働災害(労災)では、加害者本人、会社側に対して慰謝料といった損害賠償を請求することも可能となっています。

  1. 他の従業員がうっかり落とした物に当たった。
  2. 他の従業員が操作する重機・車両に激突された。
  3. 他の従業員が合図なく機械・重機を動かしたために怪我をした。

他の従業員等に原因がある場合の適応について

労災保険は、業務中の事故、または通勤途中の事故などによって怪我をした場合に、労働者本人やその家族の生活を守るためにある公的保険制度の1つです。よって、他の従業員などに原因があって怪我をした場合でも、労災保険給付を受けることができます。基本的に、労働者を雇用している事業主は、労災保険への加入が義務付けられているため、まずは労災保険の利用を検討するのが良いでしょう。

しかし、労災保険だけでは、被害者の方が負った損害の一部しか補償されないといったケースはめずらしくはありません。休業補償等も8割程度、慰謝料相当の保障が発生することはありません。そこで、労災給付の不足分については、会社側、もしくは加害者側に対する損害賠償請求にて補うことを検討しなければなりません。

加害者に直接の損害賠償請求できる

他の従業員等のミスが原因である場合、加害者となった従業員は、被害を被った相手に対して損害賠償する義務を負うことになります。これを不法行為責任といいます。不法行為とは、故意または過失によって違法行為を行ったため、被害者に損害を発生させてしまうことです。加害者側の不法行為によって怪我をしてしまった場合、以下のような項目で損害賠償を請求することが可能となっています。

  • 治療費
  • 入通院費用
  • 付添看護費用
  • 休業損害
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益など

不法行為責任の要件

では、具体的にどういった場合に不法行為責任が発生するのか、要件についても見ていきましょう。不法行為責任が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 加害者側に故意または過失がある
  2. 被害者の権利を侵害している
  3. 被害者に損害が発生している
  4. 被害者の損害と加害者の行為の間に因果関係がある

使用者責任について

不法行為責任を負った加害者を雇用している会社に対しては、「使用者責任」が成立する場合、慰謝料といった損害賠償を請求できる可能性があります。

使用者責任とは、業務中に従業員が他の従業員に損害を与えた場合、従業員を雇用している会社側にも責任が発生するというものです。使用者責任が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 加害者と会社との間に雇用契約等の関係がある
  2. 従業員の行為について不法行為責任が成立する
  3. 被害者への損害が業務中に加えられたものである

会社に損害賠償請求できるケース

上記のとおり、他の従業員による労災が発生したケースにおいては、加害者だけでなく会社側に損害賠償請求ができる可能性があります。使用者責任の他にも、もし、会社側に、「安全配慮義務違反」があった場合は、会社への損害賠償請求も検討しましょう。

従業員に危険な作業をさせる際に、会社側が必要な安全措置を取っていなかったことが原因で、他の従業員のミスをひき起こし、大きな事故へと発展してしまった場合などです。これは、会社側に安全配慮義務違反があったと言えるため、損害賠償請求の対象となります。

また、加害者となった従業員側に満足な資力がない場合は、会社に対して損害賠償請求することで金銭の支払いを受けたほうが現実的です。

会社への損害賠償請求の進め方について

会社への損害賠償請求をする場合、まずは交渉からはじめることになります。そして、交渉の前提として、「内容証明郵便」による請求をするのが一般的です。ここで会社側が請求に応じてくれれば、問題は解決となります。しかし、話し合いで解決できない場合は、訴訟や労働審判といった手続きも視野に入れなければなりません。

労災の被害者が、会社に対して損害賠償請求の訴訟を行う場合は、会社側の責任を明確に特定し、立証する必要があります。また、会社側の主張に対しての反論についても事前にある程度は用意しておく必要があります。しかし、会社を相手に損害賠償請求の訴訟をするのは簡単なことではありません。場合によっては、弁護士への依頼を検討しましょう。

労災問題に関するお悩みは弁護士にご相談ください

他の従業員の不注意によって怪我をしてしまった場合、まずは労災給付を受けるための申請を行いましょう、そして、労災給付だけで満足な支払いを受けられなかった場合は、加害者に対してだけでなく、会社に対して損害賠償請求を求めることが可能です。

しかし、加害者や会社に対して損害賠償請求を求めるのは簡単なことではありません。話し合いの際は交渉スキルが求められますし、裁判ともなれば豊富な専門知識がなければ勝訴判決を取ることはとてもできません。特に、相手が会社ともなれば、まず間違いなく弁護士がついてくると考えておかねばなりません。そこで、もし加害者や会社側への損害賠償請求を検討しているのであれば、弁護士への相談を強くおすすめします。弁護士であれば、貴方の代わりに交渉の席に立つことができますし、仮に裁判へと発展してもすべて任せることができます。当事務所では、労災問題に精通する弁護士が在籍しておりますので、まずはお電話からご相談予約をお取りになっていただければ幸いです。