フォークリフトによる労災について弁護士が解説

数ある労働災害の中でも、フォークリフトを使用して起きた事故は多く、ここ数年では年間平均して2000件前後の事故が起きています。そのうち、死亡事故が30件程度と、死に至るケースもあり、非常に危険な事故が多いという実情があります。フォークリフトによる事故が起きた場合、まずは労災保険を申請してください。また、事故が起きた原因によっては、会社への損害賠償請求も視野に入れることになります。

本記事では、フォークリストによる労災について弁護士が解説していきます。

岡山で労災の被害に遭われた方へ。会社に対して慰謝料や損害賠償を請求できる可能性があります。

フォークリフト事故の多発とその原因

なぜフォークリフト事故が多発しているのでしょうか?

フォークリフト事故の一般的な原因と事故例を共に見ていきましょう。

フォークリフト事故の危険性と作業環境の重要性

フォークリフト事故の危険性については、厚生労働省も問題視しているほどです。厚生労働省では、フォークリフトの労災防止を訴えており、事故の具体例や対策方法をまとめるだけでなく、安全衛生について言及し、フォークリフトの事故防止に努めています。

フォークリフト事故が発生しやすい環境としては、坂道や入り組んだ通路、フォークリフトの後ろと、特に右側が危険となっています。フォークリフトに慣れた方であっても、不注意があれば事故を誘発するため、不用意にそばに近寄ると大事故を引き起こす危険があります。安全な作業環境を整えることが、事故防止の上で非常に重要となっています。

フォークリフト事故の一般的な原因と事故例

フォークリフト事故の一般的な原因としては、主に以下のものとなっています。

  • ①フォークリフトの無資格者が運転をしていた
  • ②フォークリフトキーが管理下に置かれていなかった
  • ③フォークリフト周辺の安全管理が行き届いていなかった
  • ④特定自主検査等の整備が行われていないフォークリフトを使用していた

なお、フォークリフトによる事故は、人との接触事故、荷物や壁の間に挟まれる事故、運搬中の荷崩れ事故や車体の転倒事故など、様々な事故例が過去に幾度となく起きています。

フォークリフトに関する法的規制と義務

フォークリフトを取り扱う業者には、「労働安全衛生規則」という法的規制と、定期的に点検を行う義務が課せられています。

労働安全衛生規則におけるフォークリフトの定義と規定

フォークリフトとは、「荷物を積み込むフォーク、ラム等とそれを昇降させる機構を備えた動力付き荷役・運搬用の機械」と定義されています。

労働安全衛生規則によると、フォークリフトを操作するには、「フォークリフト運転技能講習を修了した者」でなければ認められていません。

フォークリフトに関する作業計画と指揮者の役割

フォークリフトは、「車両系荷役運搬機械等」に含まれるため、必ず「作業計画」を作成しなければなりません。

また、労働安全衛生規則によると、「車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない(第151条の4)」となっているため、指揮者の選任が必要となっています。

もし、作業計画が作成されていなかったり、指揮者が選任されていなかった場合は、後述するように、会社側の安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求できる可能性があります。

労災対応と労災申請の重要性

フォークリフト事故でケガを負った方、後遺症が残った方は、労災保険を申請すれば、給付を受けることができます。まずは、会社の労災担当者に労災対応をお願いしてみましょう。

しかし、会社によっては労災対応してもらえないことがあります。その際は、自身で労災申請を行うことが非常に重要となっています。

労災認定による労災保険給付の請求権

労災申請の際に注意したいのが、労災保険給付の請求権の時効です。

労災保険給付の時効は2種類あり、給付の種類ごとに請求期限が定められています。

以下にて、時効の起算点と共にまとめて紹介します。

時効期間が5年

時効期間が5年の給付金は以下のとおりです。

  • 遺族(補償)年金・遺族(補償)一時金(起算点:被災労働者が亡くなった日の翌日)
  • 障害(補償)給付(起算点:傷病が治療した日の翌日)

時効期間が2年

  • 療養(補償)給付(起算点:両方の費用を支出した日の翌日)
  • 休業(補償)給付(起算点:賃金を受けない日の翌日)
  • 介護(補償)給付(起算点:介護を受けた月の翌月1日)
  • 葬祭料(葬祭給付)(起算点:被災労働者が亡くなった日の翌日)

フォークリフト事故に遭った場合の労災申請の重要性

フォークリフト事故に遭った場合、ケガが重症であればあるほど、仕事復帰までに期間を要することになります。その間は、収入を得ることができなくなってしまうのです。

労災申請によって、適正な給付を受けることは生活を維持するためにも非常に重要です。

労災申請による証拠保全と責任追及の有利さ

労災事件では、証拠を確保することで雇用主である会社側に責任追及する際に有利になります。しかし、証拠となるような資料は、会社側で管理されているため、労働被害者の手元にくることはありません。そういった場合は、「証拠保全」という手続きが重要となります。

証拠保全とは、裁判所を通じて雇用主に必要な資料の提示を求める手続きです。裁判所への申立てが必要となるため、証拠保全を検討している場合は、弁護士に相談しましょう。

労災保険給付と会社への損害賠償請求

では次に、労災保険給付と会社への損害賠償請求についても見ていきましょう。

労災保険給付だけでは補填されない実損害

労災保険給付というのは、すべての補償をしてくれるわけではありません。単に一定率で算出された金額が支給されるだけにすぎず、職業上の個性や、事故現場の状況といった個別の事情については考慮してもらえないのです。労災保険給付だけで補填されない実損害については、会社に対して損害賠償請求をするしかありません。

会社への損害賠償請求の法的構成と弁護士の役割

会社には、労働者を危険にさらさないために「安全配慮義務」が課せられています。もし、安全配慮義務に違反し、フォークリフト事故を誘発させてしまったのであれば、労働者が負った損害に対して賠償する義務を負います。しかし、労働者側には、会社が安全配慮義務に違反していた事実を立証する必要があるなど、高いハードルを越えなければなりません。

また、一般の方が会社を相手に損害賠償請求を行うのは簡単なことではありません。損害賠償請求を検討しているのであれば、弁護士に相談すべきです。

弁護士であれば、証拠保全といった手続きはもちろん、会社側との交渉、示談についても任せることができます。また、労働審判・訴訟というのは専門的な手続きであるため、一般の方が個人で行うのはほぼ不可能に近いのが現実です。労災給付だけでは補填されない実損害を受け取るためにも、弁護士に相談することを強くおすすめします。

フォークリフト事故でお悩みの方は弁護士にご相談ください

フォークリフト事故に遭ってしまった場合、労災保険給付を受けることができます。

しかし、必ずしも会社が労災対応してくれるとは限りません。会社が対応してくれないのであれば、自ら労災給付申請をするしかないのです。労災保険給付には時効が定められている給付金もあるため、少しでも早く申請することが重要です。

ただし、労災保険給付が受けられたとしても、実損害のすべてが補填されるわけではありません。実損害の補填を求めるのであれば、会社側に損害賠償請求しなければならないのです。個人の方が会社を相手に損害賠償請求するのは容易ではなく、弁護士の介入が必要です。

フォークリフト事故でお悩みの方は、ぜひ当事務所に一度ご相談ください。