仕事中に指・手足を切断してしまったら?労災の損害賠償を解説
目次
業務中に切断を伴う怪我をしてしまったら
まずは落ち着いて病院へ行き治療を受けましょう
怪我をした直後はパニックになりやすいですが、まずは冷静になることが重要です。迅速に病院に行き、適切な治療を受けましょう。
特に切断を伴う怪我の場合、迅速な医療処置がその後の回復や再接合の成功率に大きな影響を与えます。後遺症を最小限に抑えるためにも、速やかな受診を心がけましょう。
速やかに会社(使用者)へ連絡しましょう
治療を受けた後、すぐに会社に連絡し、怪我の詳細を報告しましょう。
労働基準法に基づき、会社には労働基準監督署へ労働災害を届け出る義務があります。報告が遅れると、労災認定が遅れ、必要な補償や治療費の支払いに支障をきたす可能性があります。そのため、こちらも迅速に行うことが望ましいです。
万が一、会社が労働基準監督署への届け出をしてくれない場合は自ら労働基準監督署に連絡しましょう。
弁護士への相談を強くおすすめいたします
労災事故に遭った際、法的手続きや補償内容に関する不明点が多く、適切な対応は難しいと言わざるを得ません。
弁護士に相談することで、労災保険の申請や損害賠償請求など、適切な手続きをサポートしてもらうことが可能です。
例えば、弁護士は労災保険の申請書類の作成や提出、会社との交渉を代行し、適正な補償を受けられるような支援を行います。また、弁護士の介入によって、交渉がスムーズに進み、補償の額が適切に算定される可能性が高まります。
一人で抱え込まず、まずは気軽に弁護士に相談しましょう。
後遺障害および障害補償の申請を進めましょう
治療終了もしくは症状固定の後に判断
後遺障害の認定を受けるためには、まず治療終了または症状固定を待つ必要があります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない状態を指します。この時点で、医師により症状固定の診断がなされます。例えば、切断した指が再生不可能で機能が回復しない場合、医師はその状態を症状固定と判断します。
症状固定後に、後遺障害診断書を作成してもらい、これを基に後遺障害等級の申請を行います。
手指の切断における障害等級とは
手指の切断に関しては、労災保険の障害等級が詳細に定められています。
具体的には、切断された部位(指の関節や骨の部分)とその程度によって等級が決まります。例えば、親指の第一関節から上の切断と、小指の根元からの切断では、障害等級が異なります。等級が高いほど、補償額も大きくなります。
障害等級は労働者災害補償保険法に基づいて決定され、該当する等級に応じた一時金や年金が支給されます。
障害等級 | 後遺障害の内容 |
第3級 | 両手の手指の全部を失ったもの |
第4級 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
第6級 | 一手の五の手、または母指を含み四の手指を失ったもの |
第7級 | 一手の母指を含み三の手指、または母指以外の四の手指を失ったもの 一手の五の手指、または母指を含み四の手指の用を廃したもの |
第8級 | 一手の母指を含み二の手指、または母指以外の三の手指を失ったもの 一手の母指を含み三の手指、または母指以外の四の手指の用を廃したもの |
第9級 | 一手の母指、または母指以外の二の手指を失ったもの 一手の母指を含み二の手指、または母指以外の三の手指の用を廃したもの |
第10級 | 一手の母指、または母指以外の二の手指の用を廃したもの |
第11級 | 一手の示指、中指、または環指を失ったもの |
第12級 | 一手の小指を失ったもの一手の示指、中指、または環指の用を廃したもの |
第13級 | 一手の小指の用を廃したもの一手の母指の指骨の一部を失ったもの |
第14級 | 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
労災保険ってどうやって申請するの?
労災保険の申請は、労働基準監督署で行います。
まず、労災が発生したことを証明するための書類(労災発生報告書)や、医師の診断書、治療経過の記録など、必要な書類を準備します。これらの書類を提出し、労災保険の給付を申請します。
申請手続きは簡単ではなく、不備があると給付が遅れる可能性があります。弁護士に依頼することで手続きをスムーズに進めることができます。弁護士は、必要な書類の準備から提出、そしてその後の対応まで一貫してサポートし、適切な補償を受けるための手助けをいたします。
損害賠償請求ができる可能性も!
労災保険で損害全てをカバーすることはできません
労災保険は、労働者が業務中に負った怪我や病気に対する一定の補償を提供します。
しかし、労災保険でカバーされるのは治療費や休業補償が主であり、それだけでは全ての損害を補填できない場合が多いです。
具体的には、以下のような損害が追加で発生することがあります:
- 逸失利益:怪我や病気により働けなくなった期間の収入減少分をいいます。特に、重篤な後遺障害が残った場合には、将来にわたる収入の喪失が大きくなることがあります。
- 精神的苦痛に対する慰謝料:労災により肉体的な苦痛だけでなく、精神的な苦痛も大きいです。このような非経済的損害に対する補償は労災保険ではカバーされず、別途損害賠償請求を行う必要があります。
- その他の実費:入院に伴う雑費や通院にかかる交通費なども、実際の支出として発生することがありますが、これらも全て労災保険でカバーされるわけではありません。
会社側に責任があることを立証する必要があります
損害賠償請求を成功させるためには、会社側に法的責任があることを証明する必要があります。これは、会社が労働者に対して負っている義務を怠った場合に成立します。
以下は、会社側の責任の具体例です。
会社側の責任の例(1) 使用者責任の違反
使用者責任とは、会社が従業員の安全を確保する義務を怠った場合に問われる責任です。例えば、次のような安全な作業環境を提供しなかった場合などが該当します。
- 安全な作業環境の提供を怠った:例えば、工場内で安全装置が欠如している状況や、必要な保護具を提供しないまま作業を続けさせた場合など。
- 適切な指導や教育の不足:新たな機械や装置を導入した際に、労働者に対する適切な操作方法や安全対策の教育を怠った場合など。
会社側の責任の例(2) 安全配慮義務違反
安全配慮義務違反とは、会社が従業員の健康や安全に対する配慮を欠いた場合に問われる責任です。例えば、次のような安全装置の不備や過重労働を放置した場合などが該当します。
- 安全装置の不備:例えば、機械の安全装置が壊れたまま放置されていたり、定期的な点検やメンテナンスが行われていなかった場合など。
- 過重労働の放置:労働者に対する過度な残業や過重労働を見過ごし、健康に悪影響を及ぼすような状況を放置した場合など。
- 適切な休息を与えなかった:法定休暇や休憩時間を適切に与えず、過労状態に陥らせた場合など。
請求可能な損害賠償ってどんなものがある?
労災や事故によって被った損害に対して、以下のような損害賠償を請求することができます。
治療費や入院費
まず、怪我の治療に必要な費用や入院にかかる費用を請求することができます。
これは、診察料、手術費用、薬代、リハビリ費用など、怪我を治療するために直接必要となるすべての医療費が含まれます。例えば、手指の切断事故の場合、切断部分の再接合手術費用やその後のリハビリテーションにかかる費用が該当します。
休業損害
怪我によって一定期間働くことができなかった場合、その期間の収入を補償する休業損害を請求できます。
休業損害は、給与所得者であれば休業中に支払われるべきだった給与分、事業主であればその期間に得られたであろう事業収入が対象となります。例えば、建設現場での事故によって一時的に仕事を休まなければならなくなった場合、その期間の給与を休業損害として請求することが考えられます。
逸失利益
逸失利益は、怪我によって将来的に得られるはずだった収入が減少する場合に、その分を補償するものです。
特に重篤な後遺障害が残った場合、今後の労働能力が低下し、収入が減少することがあります。この場合、その減少分を逸失利益として請求できます。例えば、交通事故で重度の後遺障害が残り、元の職場での業務が困難になった場合、その減収分を請求することが考えられます。
傷害慰謝料(入通院の精神的苦痛に対する慰謝料)
怪我によって入院や通院を余儀なくされる場合、その精神的な苦痛に対して慰謝料を請求できます。
これは、入院や通院による肉体的な痛みや不便さ、精神的なストレスなどが考慮されます。例えば、手指の切断事故の後、長期間のリハビリや通院が必要になった場合、その期間に受けた精神的苦痛を補償するための慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料
後遺障害が残った場合、その精神的苦痛に対しても慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料は、障害の程度や日常生活への影響度合いに応じて算定されます。たとえば、手指の切断によって今後の生活や仕事に大きな支障が生じる場合、その精神的な負担を補うための慰謝料を請求することが認められることがあります。
労災の損害賠償請求の流れ
会社側と交渉し、賠償金の支払いを求める
まず、労災事故が発生した場合は、会社側と直接交渉して賠償金の支払いを求めます。
この交渉では、被害者が受けた損害の具体的な内容や金額を明示することが重要です。以下のポイントを抑えて交渉を進めます。
- 損害の具体的な証拠を提示する: 医療費の領収書、診断書、入院費用の明細書、収入の減少を証明する給与明細など、損害の具体的な証拠を集めます。
- 適正な賠償金の算定: 労災保険でカバーされる部分と、それ以外の損害(逸失利益や慰謝料など)を含めて、適正な賠償金を算定します。
- 交渉の記録を残す: 交渉の内容や進捗を記録に残しておくことで、後の証拠として活用できます。
交渉が決裂すれば、審判・訴訟へ進む
会社側との交渉がまとまらない場合は、次のステップとして労働審判や訴訟に進みます。これにより、裁判所の判断を求めることになります。
- 労働審判: 労働審判制度は、迅速かつ簡易に労働紛争を解決するための制度です。労働審判は、通常3回以内の審判で解決を目指します。労働審判委員会が双方の主張を聞き、公正な解決を図ります。
- 訴訟: 労働審判で解決しない場合、訴訟に移行することができます。訴訟では、裁判所が双方の主張と証拠を基に判断をします。訴訟には時間がかかることが多いですが、公正な判断を得るための最終手段です。
労災のご相談は西村綜合法律事務所へ
弁護士を通じて交渉を行うことで、専門的な知識と交渉力を駆使して、より効果的な結果を得ることが期待できます。
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